仔猫 どこの子、猫かぶり
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


今から20年前と言えば…が特集されまくりの“成人の日”が、
ハッピーマンデー法により、
1月15日から第2月曜に制定されてどのくらいとなるものか。
なので、8日の年もあれば 14日な年もある訳で、

 「8日ってのは早すぎませんか?」

 「でもでも、第二月曜には違いありませんわよ?」

 だって松の内が明けてすぐですよ、
 どうかすると学校さえ始まってませんよ?

 昔は15日までが松の内…。

 おお久蔵殿、意外なまめ知識。

ホテル業は暦にかかわる催しが多い。
しかもしかも
古式ゆかしき何とやらに則ってのご利用をなさる、
高貴な筋の方々も少なくはなく。
よって、年の暮れは勿論、年が明けても
その期間中はご両親もずっと忙しかったため、
自然と覚えていたらしい紅ばら様だそうで。

 「それはともかく。」

あああ、先に言われてしまったぞ。(笑)
成人の日に催されるのは成人式であり、
こちらのお話に堂々の主役格としてご登場のお嬢様がたは、
まだ高校二年生の 16、17歳なので。(げほごほ、んんっん)苦笑
連休サンキュウvvという感慨にこそ なろうとも、
催し自体へはまだまだ直接関係ないかと思いきや。

 「成人、おめでとうございます、お姉様がた。」
 「○○教授のサークルの皆様、記念写真を撮りますよvv」

聖なるヲトメらを賢い女傑…もとえ、
素晴らしき貴夫人へ育成すると評判の女学園には、
これも高等部の後から設立されたものだが、
四年制の大学部と短大部があって。
大学の方は文系中心、短大の方は家政科中心なので。
高等部へ外部入学者が多いのの比ではないながら、
専攻の関係から 外部のガッコへと進学してゆくお姉様がたが
近年増えつつある中なれど。
名家のお嬢様には十二分な教養が身につく、
相当に相応なレベルの学校であるがゆえ、
順当に進学していかれる顔触れこそ
いまだ多々おいでの、堂々たる名門女子大学なのであり。

 そして、
 そういった“女学園OG”が多数おいでの学校なので

 「ああ、ひなげしさんたら お変わりなくvv」
 「本当に、何てまあまあ可愛らしいのでしょう。/////」
 「ほら、お好きだったでしょう?
  ミュゼ・ア・ラ・ネーゼの砂糖菓子ですわよvv」

ほらほら、温室のほうへお入りなさいませ。
今日はまた一段と寒かったから、お出掛けも難儀でしたでしょうにと。
会場となっているホールの入り口付近にて、
まだコートも脱がぬうち、
あっと言う間に手を取られた林田さんチの平八さん。
ちょっぴり大人な装い、スーツや和装でお決めの綺麗なお姉様がたが、
小柄な平八を相手に
優雅にもダンスを舞うよに手際よく招き入れ。
こっちよこっちと、
自分たちの輪へ入れと誘いをかけることかけること。

 “…さすが、
  社交界でも有名どころを輩出したおす学園だけありますね。”

伊達に上流階層の名家に育ったお姉様がたじゃあないなぁと
白百合さんこと 草野さんチの七郎次お嬢様が
今更ながらに感心しておれば、

 “隙がない。”

さすが、元 弓道部の部長殿、
今の招きようはなかなか振り払えぬ呼吸だったぞ、なんて見事なと。
紅ばらさんこと 三木さんチの久蔵お嬢様が、
…あんたどこまでもそっちなんだねという物差しで、
平八をとっとと引っ張り込んだお姉様の手際へ唸っていたりして。
もう薄々お気づきかという此処は、
彼女らが通う女学園とは同じ最寄り駅下車という至近におわす、
同じ系列法人が営む女子大の、中庭に設えられた中ホール。
学舎の作りも事務棟や関連施設などの外観も、
瑞々しき緑あふるる前庭・中庭を巡る遊歩道や、
桜に楓にスズカケ、モクレンなどという、
様々な立ち木の配置などなども、
女学園の仕様や意匠へと似せているが、
その最たる場所が、この、
ちょっとした講堂のような広さのある、
ロマンチックなロココ調の内装も麗しい空間で。
学園祭のおりには
外部から招いた声楽家の皆様や室内楽の名手の方々が、
自慢の斉唱や演奏を披露なさるよなステージもありの、
学内での催しの中心となるホールでもあり。
そして今日はといえば、
各地でそれなりの祝賀の会が開かれている“成人の日”に相応しく、
在学生のうちの二回生らの成人を祝すとし、
小さな内輪での会合が催されておいで。
お茶とお菓子と、それから楽しいお喋りと。
研鑽を重ねた楽器演奏を披露したり、
お宝グッズ争奪、ビンゴ大会が催されたりし、
品のいい笑い声のさざめきが絶えぬ、なかなかのにぎわいで。
各人、地元の集まりへも参加しようからと、
こちらは午後からとなっているが、
何の、ここ数年ほどは、
こちらをこそ優先してお運びになるお姉様ばかりという
結構な盛況ぶりだそうで。

 “ここ数年…。”
 “ほほぉ。”

な、何が言いたいのかな? 白百合さんも紅ばらさんも。(笑)

 「さあさあ、草野さんも三木さんも。」

モテモテな平八を、
半ば他人事扱いで入り口付近に突っ立って、
あとの二人が見送っておれば。
物怖じしているようにでも映ったか、
他の、やはりドレスアップしたお姉様がたが、
さあさ どうぞとホールの内へと案内してくださって。

 「シスターたちはお変わりなぁい?」
 「そうだ、草野さんたら連勝記録をお伸ばしだそうね。」
 「三木さんも、先日のバレエの公演では
  いきなり主役の代演をなさって大変だったとか。」

何げないお声かけのようだが、実はなかなか油断がならぬ。
同じ学園の敷地の内にいた頃ならいざ知らず、
学年も離れている存在の、去就というか活躍というか、
新聞に載るほどの代物でもない限り、
意識してアンテナを張ってでもないと拾えるものではないというに。

 “それほど、ヘイさんのシンパシィの方々は、
  情報通でもあられるということでしょうよ。”

 “………。(頷、頷)”

だって、七郎次や久蔵がこの集いへ同行したのは今年が初めて。
愛嬌があって愛らしい、
マスコットガールとして上級生の皆様に人気の平八のみならともかく、
お姉様たちにしてみれば、
そのおまけでしかなかろう、あとの二人の活躍までも、
意識して集めておく必要なぞないのにね、と。
それは朗らかに笑顔を振りまき、
嫋やかな笑顔でもって、お茶をどうぞと勧めるお姉様へは、
名指しで“○○様ありがとうございますvv”と
甘えるように目許をたわめて極上のお顔をしているの、
凄いなぁとしみじみ感心していたりするものの。

 『ぬぁにを仰せか、お二人さん。』

結句 夕方時分の解散となり、
ちょっと休ませてとごくごくご近所の平八の下宿先、
八百萬屋にて、やっとのこと至近になれた者同士、
本音を明かし合ってのお喋りを始めたところ、

 『何も私ばかりが、
  愛想がいいの、外面がいいのってワケじゃあありませんよ?』

愛想笑いのし過ぎで頬っぺが痛いと、
ふわふかな頬へ手のひらを伏せてむにむにと揉みつつも、
心外だなぁと言い返して来た平八いわく、

 『シチさんは元々、
  場の空気を取り繕うのがそりゃあお上手だから、
  意識もしてないことでしょが。
  そんな愛想のよさ、お姉様がたはとうに注目されてらしたし。』

それにと言いつつ、パンと軽く頬を叩いてから、
その猫目を向けた久蔵さんへも、

 『バレエの新星にして、
  オスカル様とかいう王子様似の久蔵殿には、
  年上なのにお熱になるのは はしたないとお思いになるか、
  自称“隠れファン”が たんとおいでですからね。』

 『自称と口に出した時点で、隠れてないような。』
 『………。(頷、頷)』

そんなこんなで、実はひなげしさんファンと並ぶほど
お姉様がたの中には三華様がたを愛でる層も多かりしだったらしくって。

 『昨年度は私しかお招きいただいてなかった集いですが、
  今年は是非ともお二人もご一緒にと打診されておりまして。』

実は結構気疲れするらしい会合へのお招き、
あとのお二人も…との申し出に、
やたっvvとばかり、
内心でガッツポーズを取っていたひなげしさんだったというのは
ここだけのお話。

 「私は基本甘えたなんで、
  いくらでも甘やかしてくださるなんて、
  ありがたいお招きですが…。」

 「品のいい子として甘えなきゃならないのは、
  ちょおっと骨ですものねぇ。」

肩が凝ってしまうのが難です、はいと、
困ったような苦笑をするひなげしさんへ。

 「実はアタシも…。」

父君のお友達、壮年揃いの画家の皆様の前に出るときは
そりゃあ大きな猫をかぶっているものと白百合さんが同調すれば、

 「…俺も。」

無口なことを内気だと勘違いされるのをいいことに、
一言も話さなかったレセプションも数知れず。
謎のクール・ビューティで通っているが、その実態は、

 「眸ぇ開けて寝られる、
  スリーピング・ビューティですもんねぇ。」
 「〜〜〜。//////」

だって退屈なんだもんということか、
七郎次から“いい子いい子”と撫でられつつ、
ちょっぴり赤くなっておいでの紅ばら様だったりし。
一応は世間体を気にしなくもないのよと苦労している一面こそ、
保護者の皆様にも知っといてほしかったりするのだが。

 「気がついてもないでしょね。」
 「…言えてる。」
 「こんなの平気楽勝でこなしてるとか思われてるよ、きっと。」

祭日なのに制服着た上でお行儀よくし通したしねぇ、
うんうんうんと。
思い切りの背伸びをしつつ、
隠し着れない愚痴がついつい、幾つもぽろり。

 「アタシたちだって苦労してない訳じゃあないのにねぇ。」
 「………。(頷、頷)」
 「そうですよ。」

勘兵衛様なんて、物凄いややこしい事件を扱ってたかと思いきや、
いきなり籠城事件の陣頭指揮を執ってるときだってあるし。
ゴロさんなんて、時々 何処へとも言い置かないで遠出しちゃうし。
兵庫も…。
(白百合様 訳;
    助っ人先で、半日がかりのオペ? 何それ、苛酷。)

  かように、

いつも大人の皆様をハラハラさせるお転婆なお嬢さんたちだが、
微妙ながら苦手もあるのだという一幕。
恥ずかしいからと、口に出さない彼女らにも
大きな一因はあるのだという点へは、それこそこそりと蓋をして。
はてさて、今年はどんな1年となりますやら……。






    〜Fine〜  14.01.14.


  *1年で一番寒い季節の到来ですが、
   お嬢様たちはやっぱりお元気なようで。
   こういう“いい子でいなけりゃ”なシーンこそ、
   大の苦手だったらしいです。
   意外すぎて気づいてないんでしょうね、保護者の皆様は。(う〜ん)

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